酒を飲むと顔がすぐに赤くなる体質の遺伝子を持つ人は、そうでない人より膵臓(すいぞう)がんになるリスクが約1.5倍高いことが、愛知県がんセンター研究所(名古屋市)の松尾恵太郎(まつお・けいたろう)主任研究員らの調査で分かった。10月3日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。
飲酒と肝臓がんや食道がんの関連性は既に知られているが、遺伝子型に絡めて飲酒と膵臓がんとの関係が確認されたのは初めてという。
松尾研究員らは、飲酒後に体内でアルコールが分解されてできる有害物質アセトアルデヒドの代謝能力が、3タイプある遺伝子型によって(1)正常(2)低い(3)ほとんどない-と違うことに注目。2001-05年に膵臓がん患者138人と、がんでない690人を対象に、遺伝子型や飲酒量を比較調査し、年齢や生活習慣を加味して膵臓がんのリスクを計算した。
その結果、日本人の約5割を占めるとされるアセトアルデヒドを正常に代謝できる人に比べ、約4割の人は代謝に時間がかかるため、飲酒で顔が赤くなりやすく、このリスクが1.52倍だった。残りの1割の人は代謝能力がほとんどないが、酒も飲めない体質のため、リスクは1.09倍にとどまった。
また、正常に分解できない2タイプの人は日本酒換算で1日1合アルコール摂取が増えると、リスクが3割増すという。
松尾研究員は「酒を飲めると思っていても、知らずに膵臓がんの危険性を高めている人もいる。顔が赤くなるタイプの人は量や回数を減らしてほしい」と話している。 |